yanaka_note

Not FR

23時過ぎに、僕はある男の話を書いていた。

たとえば、君が何かを望むとする。車、家、家庭、なんでもいい。
それを本気で求めたとき、君はそれを得るために様々なことを試す。

もし、その望むものが、ずっと先、遠くにあるものだとして。
それは君以外の多くの人たちが憧れ、手の届かないものと心得ているとして。
そこに行くには沢山のものを失うかもしれないし、失ったとしても手に入らないかもしれない。

その男は現実には存在しないような人間だった。
まさしくフィクションの世界にいた。
彼は幻想のなかに生きていた。

もしかしたら、君だってそうだったかもしれない。
それなのに君は彼じゃなかったし、彼はついに君のように、現実を受け入れることはできなかった。

けれど時々、思考と現実が交換されることがある。
なぜなら、現実を動かす人間がそれぞれ同じ思考や幻想を持ったとき、それは共通の現実になるからだ。たとえば、それは紙幣や、金塊のようなものだ。ただの物質が、それぞれの人間にとって物質以上の意味を持ったとき、それはただの物体ではなくなってしまうのに似ている。

その男が見いだした対象は、その物体は、その男が幻想を見いだしたことによって、その対象は、その幻想そのものになろうとする。幻想は伝染してコピーされて拡大して、やがて現実となる。